18《等々力・百目木・トドメキ・ドンドン・トロントロン》(水の音)

東京都世田谷区には23区内で、たった1ヵ所だけ開発から残された渓谷、 等々 ( とど ) ( ろき ) 渓谷があります。この渓谷は多摩川の支流である ( ) 沢川 ( ざわがわ ) の下流にあたり、都民の憩いの場所として約1キロメートルの散策コースがつくられています。途中には「不動の滝」があり、修行の場所にもなっているのですが、今では少ししか水が落ちていません。しかし、古くはこの滝の音が ( あた ) りに ( とどろ ) き渡り、その音から、この辺一帯が等々力と言われるようになりました。

他にも神奈川県川崎市中原区等々力、山梨県東山梨郡勝沼町等々力、長野県南安曇郡穂高町穂高等々力などがあります。

( どう ) 目木 ( めき ) も滝や川の音からでた地名と言われています。全国には98ヵ所もあるのですが、関東地方では千葉県袖ケ浦市百目木の1ヶ所だけで、残りの97ヵ所は全て東北地方にあります。でも、山形県には一つもなく、青森、岩手、秋田、宮城、福島の各県に集中しているのはどういうわけでしょうか。百目木さんや百目鬼さんも東北地方に多いようです。

珍しくカタカナ表記でトドメキという地名もあります。愛知県東海市は鉄の町と言われていますが、臨海工業地帯と住宅地の境目に名和町トドメキという小地名があります。工業地帯は埋め立て地なので、かつてはこの地に波の音が轟いていたのでしょう。

もっと珍しいものが岡山県倉敷市連島町西之浦ドンドンです。川の流れる音から付けられたようですがカタカナで、しかも擬音擬態語が地名になった例はなかなか見られません。

極めつきは宮崎県児湯郡川南町平田トロントロンでしょう。川南町は宮崎市から10号国道を北上すること約1時間、 日向 ( ひゅうが ) 灘に面した宮崎県のほぼ中央に位置した人口17000の町です。

1877年(明治10年)西南の役に敗れた西郷隆盛は熊本県の ( ) 原坂 ( ばるざか ) から、高千穂、延岡を ( ) て、ここまで ( のが ) れて来ました。ちょうどそのとき、疲れきった西郷の耳に泉から湧き出る水の音が、なんとも心地よく届いたらしいのです。喉を潤し、身も心も癒された西郷は確かに耳にしたその「トロントロン」という音を「この地の名にしてみては」と言ったと伝えられています。

それ以前に、参勤交代の途中でお殿様が、この泉の音を耳にしたからという説もあるのですが。

いずれにしても、この水を飲んで、あまりの美味しさに感激した方が、「トロトロ」と流れる様子を見て、もっと豊かな表情と癒しの意味をこめた「トロントロン」というオノマトペ(擬音擬態語)をどうしても地名にしたかったのでしょう。

また、このあたりは緩やかな坂道が続いていますが、「ゆるやか」を宮崎弁で「とろんとろん」と言うことから、この地名がついたという説もあります。

余計なことですが、日本が世界に誇るコンピューターの基本ソフト、「トロン」の製造工

場をこの地に作ったら「トロントロンのトロン」になりますね。

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