1《 大和田 》(「やまと」の語源と同じか?)
(1) 和田は 曲処 の意味で山裾が湾曲、または河川が湾流している状態を表現する地名( 大 曲 処 〜 大 和田 )。
(2) 多和 はタワミの意味で尾根の凹んだ所や凹地または盆地を意味し、後に多が大に代わり、場所の意の 処 が 田 になった( 多和 処 → 多和田 → 大 和田 )。
以上が地名辞典などで調べた大和田の成立過程です。
(1)は納得できます。小和田もこれで説明がつきます。(2)は随分タワケた(気がたわむ事で同じ意味か)理屈だと思うのですが、私にとって長い間の疑問であった、大和を「やまと」と読むことの解決にはなりました。「やまと」は文字通り、「やまとことば」で山の 麓 のことですから 多和 (盆地)→大和で正解なわけです。
(3) 上 戸 が母音欠落で、わど→わだ、になった( 大 上 戸 → 大 和 田 )。戸は出入り口、 水戸 は 水 な 戸 であり 河口 の意味で江戸も同じ、「やまと」も 山 戸 とも解釈できる。同じ意味で千葉市の 登 戸 、小田急線の 登 戸 がある。 登 戸 は多摩川から河岸段丘への登り口。 上 戸 (あがと)も登戸も良くある地形。(私説)
茨城県潮来市 上 戸 (旧牛堀町)は 常陸 利根川のほとりから高台へ向かっての上り口になっています。埼玉県 新 座市 にある大和田は 柳 瀬川 流域から 平林 寺 のある台地へ大きく登って行く場所です。東武野田線の大和田駅(岩槻市南端)は台地地形の縁になっています。茨城県かすみがうら市(旧出島村)には大和田坂下からの長い登り坂があります。 東京都渋谷区 道玄坂 の 謂 れは鎌倉時代に大和田太郎道玄が坂の下に住んで居たからだそうです。そして、茨城県鉾田市大和田も菅野谷に向かう坂道の入り口になっています。
これらの事から私は(3)を考えてみたのですが、いかがでしょうか。それにしても、渋谷駅前の地名が事の次第によっては大和田になっていたかも知れないし、あのまほろばの 大和 の国と大和田が同じ普通名詞から発生した固有名詞かも知れない事を思うと、地名はちょっとしたきっかけでどうにでもなってしまうものなのですね。
ちなみに、全国の大和田の地名ですが、北は北海道留萌市大和田から南は島根県隠岐郡隠岐の島町岬町大和田まで89ヵ所もあります。おそらく、この89ヶ所には(1)(2)(3)の成り立ちが入り混じっていることでしょう。
万葉語では「おほわた」は 大 曲 であり、入り江の意味で使われております。現在の神戸港の中世名は「 大 輪田 の 泊 」でした。これらの「わだ」は朝鮮語のpataから来た海の意味かと思われます。「わだつみ」は「海の神」ですから。(つ=の、み=神)
なお、 多和田 は滋賀県米原市多和田と京都府綾部市白道路町多和田に地名として残っており、人名としても多和田 忠 (日本人初北極点到達者)・多和田葉子(日本語とドイツ語で創作する作家)・多和田 吏 (作曲家)各氏などが数えられます。
かわたれに 辛夷 大和か大和田か 安正