「不倫は文化」論

「不倫は文化である」

かつて、はっきりと言い切った方がいます。そのタイミングの良さと弾んだ言い方に、私は思わず快哉を叫んでしまいました。けだし、この言葉は時代を表す名言として歴史に残るでしょう。

言った方の人柄がいいのです。才能があるわけでなし、特別イケメンであるわけでなし、フツーの〔フツーの=わりと(若者言葉)〕ありふれた俳優さんであったことが。

これがもし「お金で買えないものは何一つない」などと言って株を買い占めたり、政治家になろうとしてズッコケてしまった金権まみれの方がノタマった、となるとウサン臭くていただけません。ソコソコの俳優さんが、さりげなく、なにげなく、あっさりと呼吸をするように言ったことが、なんとも文化的なのです。

だからというか、このようにというか、それにしてもというか、とにかく文化とは、なんと、むなしく、役に立たないものなのでしょう。

絢爛豪華な王朝文化も、面白おかしい大衆文化も、生活をしていく上では何の役にも立ちません。

身の回りで、役立つものはみな文明によって、もたらされたものばかりです。特に東京では文明ばかりが眼につきます。東京は文化に乏しい街と言えるかもしれません。

街並みがそうならば、そこに住む人たちも当然そうでしょう。生活を追い求める人々は、すぐに役立つことにしか手を出しません。高度成長期もバブル期も文明の追及に明け暮れました。あれは文化ではなかったのです。

バブルが弾けてマイナス成長時代に入ると、男も女も暇をもてあまし、することがなくなってしまいました。なにせ今までは文明にしか興味がなかったのですから、急にその道をふさがれたからといって、すぐに方向転換をすることはできません。しかも「血道を上げなければ気がすまない」というベクトルは残っています。そこへ持ってきて貯め込んだお金があるわけですから、たまりません。立ち止まって少しは考えてみたものの、お金と暇を持て余した方たちのすることといったら、もう決まっています。

5つ☆の施設は建造が追いつかないほど繁盛しました。ChristmasなどはMarriedUnmarriedも入り乱れて、ごった返したそうです。もう逆さクラゲには人気がありません。これで、東京もパリ並みの文化都市になった、と言えるのでしょうか。

役に立つことは文明であって、生活の質を上げはしますが、それだけでは良い人生とは言えません。役に立たないこと、恐れずに言うならば頽廃こそ、文化であり、それによって心が潤い、人生が豊かになるであろうことは解っています。

でもなんだか、わびしいなぁ。金妻やリストラ予備軍が、やっと文化に、人生に、ケツロをミイダシタと思ったら、それは不倫であったなんて……。嗚呼!

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