国民性を無くそうとする力
男の夢や希望を語るとき、よく引用される言葉に「西洋の
また、ヨーロッパのジョークに「天国と地獄」といわれるものがあります。「天国にはイギリス人の銀行家、ドイツ人の警察官、フランス人のシェフ、イタリア人のウェイターがいて、地獄にはイタリア人の銀行家、フランス人の警察官、イギリス人のシェフ、ドイツ人のウェイターがいる」というものです。これもいろいろなパターンを考えることができるので座談で使えば盛り上がるでしょう。
もう一つ、タイタニック号がいよいよ沈みそうなとき、船長が男性乗客を説得して回る言葉があります。イギリス人には「あなた方はジェントルマンなんだから女性と子供に先を譲りなさい」、イギリス人は納得してそうします。アメリカ人には「あなたはヒーローになりたくないか」、ドイツ人には「これはルールなのだから守らなくてはいけない」、日本人には「みんながそうしているんだから、あなたもそうしなさい」などと。
いずれにおいても、これらは各国の国民性を実に巧みにわかりやすく説明した名ジョークです。確かに日本女性は慎ましく貞淑であり、イギリス人は実直な紳士で、ドイツ人は規則に厳格、フランス人は美食家、イタリア人はめっぽう人当たりが良く、アメリカ人はヒーローになりたがり、日本の男は横並び主義で、どれもこれも有名です。
これらの国民性は一朝一夕に出来上がったものではありません。気候風土の違い・
ところが、最近、無理やりに単純化、単一化して同じ色にしようとする大きな力がどこからともなく忍び寄っている気がしませんか。
文化は地域性や民族性が強いものほど貴重で、しかも普遍性があるといわれています。国民性は文化そのものですから、まったく同じことが言えるでしょう。
例えば、日産社長のカルロス=ゴーンさんの提唱するコミットメント(実行責任)方式などは元々日本の武士の習慣だったものです。武士は嘘や逃げ
ここで、自らを振り返ってみると、我々は昔からの好ましい性格や特長的な習慣を、殆ど捨て去ってしまった事に気がつきます。
1 物を大切にする(手入れや修理は自分でした)
2 情けをかける(ルールよりも人情)
3 無益な殺生を嫌う(今は動物も人も理由もなく殺される)
4 花や紅葉をめでる
5 虫や小鳥の声を聴く(虫の声は欧米人には雑音)
6 詩心がある(誰でも短歌や俳句などの詩を作れるのは日本人だけ)
7 あわれみの心をもつ(相互扶助)
8 嘘やごまかしを嫌う(政治家は逆)
9 信心深い(素朴な宗教心が今では新興宗教や悪徳占い師などに利用される)
10 ナイーブで自己主張をしない(テレビの影響とカラオケ流行で消えた)
11 静寂を愛する(これもテレビの影響とカラオケ流行で消えた)
12 わび、さび、幽玄を好む(茶道と能楽は世界の宝)
13 味や匂いに敏感である(旨み、こく、切れ、などが分かる)
14 質素で地味、倹約を好む(金の使いどころを心得ている)
15 清潔を好む(家の前の道路まで掃除をする)
16 歩きながら物を食べない
17 ポイ捨てをしない(捨てる物などなかった)
18 知らない人とも挨拶する(登山では今も残っている)
19 人が見ていなくても悪い事をしない(おてんとうさまが見ている)
20
21 争いを避け、横並びを好む(人を押しのけて金持ちや有名になることを恥とした)
22 もののあわれを理解する
これらの、自然の摂理からくる素朴な習慣や、上品で好ましい性格、そして、哲学的でさえある生き方を、もう一度取りもどして国民性を再確立し、世界の潮流に逆らおうではありませんか。
そして、単純化、統一化しようとする大きな力とは何なのか、どこから来ているのか良く考えてみましょう。
グローバルゼーションとはアメリカ原理主義にほかなりません。あらゆる原理主義の押し付けが紛争の火種になってきたことは歴史が証明しています。世界中をアメリカの価値観で統一することなど、できるはずがありません。
また、国語を使いこなせる前の児童に米国語を学ばせることは価値観の混乱を招くことになりましょう。言葉を覚えることは価値観を形成することですから。
怪しげなバイリンガルを育てても真の国際化にはなりません。